【醸造】バトナージュ、ウイヤージュとは?

醸造

こんにちは!
最近、仕事先のワイナリーでは、剪定と誘引が終わり、萌芽を迎えています。
醸造の方は、引き続き、樽でワインを熟成中です。熟成中は亜硫酸量の確認やウイヤージュをして日々管理を続けています。
今回はバトナージュとウイヤージュについて書きたいと思います。

バトナージュとは?

アルコール発酵で果汁のみを使用する白ワインの場合、樽で発酵させることが可能です。樽で発酵させた場合、一仕事終えた酵母は”滓(おり)”として樽の底に沈んでいます。赤ワインの場合は、アルコール発酵完了後またはアルコール発酵終盤で樽入れするため、白ワインほど滓はありません。

バトナージュでは、専用の棒を使って、底に沈んだ滓を攪拌します。これにより、滓から旨味成分を抽出することができます。
棒を前後、上下に動かし、樽の中で滓を舞い上げます。棒が樽の内面にあたる、トントンという音が心地よい作業です(本当は内面に当てないほうがいいのですが、下手なので当たってしまいます…)。バトナージュを終えると、樽の口元から見えるワインの色が濁ります。
トナージュの際には、手の感覚で滓の量を感じることができます。滓が多すぎると還元臭が発生しやすかったり、滓が少なすぎると味わいの薄いワインになってしまうことが予測できます。

また、バトナージュ前後でワインの味わいが変わります。
バトナージュをした後は、旨味を強く感じます。自然派ワインでは旨味を感じることが多いですが、滓をろ過せずに瓶詰するため、微細な滓が旨味を感じさせてくれるのでしょう。

ウイヤージュ

バトナージュが終わったら、ウイヤージュをします。
ウイヤージュは、日本語では“補酒(ほしゅ)“と呼んでいます。樽熟成のワインは、樽の木目を通じて徐々に蒸発していきます。樽の口元まで満タンにしておいても、一週間後には数cm液面が下がり、樽の上部は空洞になり空気に触れる状態になります。
ワインを空気に触れた状態にしておくと、酸化が進み、また酸素を好む雑菌も繁殖し、ワインの味わいを劣化させます。

ウイヤージュでは、週に一度くらいの頻度で目減りしたワインを注ぎ足し、口元まで満タンにします。ウイヤージュ用のワインは密閉できるステンレスタンクなどに保管をしておき、ピッチャーやワインボトルを使って樽に注ぎます。
なお、目減りする量は、新樽ほど多く、樽に入れてから間もない時期ほど多いです。

また、多品種のワインを樽熟成している場合、ウイヤージュ用のワインは品種の数だけ必要となるため、ウイヤージュ作業はそれなりに時間がかかります。

もっと大事なこと…

ウイヤージュなどをするときには、ワインの色や香りを確認します。
色については、清澄度合いや輝き、香りについては香りの変化やオフフレーバーが出ていないかを意識します。
もし、オフフレーバーが出てきている場合は、その種類ごとに必要な対処を行います。例えば、還元臭が出ている場合は、ワインを他の樽やタンクに移動することで空気に触れさせてあげる、などです。

1樽にはボトル約300本分のワインが入っていますので、管理不足でダメにしてしまうと大きな損害になります。特に小規模なワイナリーほど、樽の数が少ないため、1樽ダメしてしまうとブレンドしてもごまかせなくなりますので影響は大きいです。

バトナージュやウイヤージュは、作業自体は面白くありませんが、発酵終了後から瓶詰までの変化を観察するのはとても興味深いです。

次回の記事は…

次回の記事では、畑の選定条件についてまとめてみようと思います。4月~5月は新たに畑を拓いて苗木を植える時期です。栽培家それぞれで畑の選定にはこだわりがあると思いますが、私が考える“いい畑”、“悪い畑”について書きます。


畑の見方を知っていると、ワイン畑をご覧になる際にいいブドウができる畑なのか否か、参考になるかと思います。

引き続き、よろしくお願いいたします!

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