【畑】標高の高いワイン畑が増えている

畑仕事

こんにちは。
九州南部よりも関東甲信が先という珍しい梅雨入りをしましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか。

私は、仕事先のワイナリーでは、引き続き伸びた枝をワイヤーに沿わせてあげる作業(新梢誘引)をしています。また、これから開花となり農薬散布が大切な期間です。
自分の畑では、来年ピノノワールを植える畑の整備(草刈り、石拾い、計測…)を始めました。

今回は「標高の高い畑」についてです。最近、長野県では標高が高い畑(標高1,000m程度)が増えています。将来の温暖化を見越してのことだと思いますがどうなのでしょうか。

私の考えとしては、”現時点では良い悪いはわからない”というところです。標高が高い畑は植えて5年以下の畑が多く、これからワインとしてリリースされてくると思いますので、味わうのが楽しみです。

標高が高いことのメリット

標高が上がれば気温が下がるため、以下のような栽培が可能となります。

  • 冷涼な気候を好む品種を栽培しやすくなる
  • 酸を保持しやすい

ワインブドウは品種ごとに適する温度帯があり、冷涼~温暖まで気候ごとに適する品種が異なります。標高が高い畑では、ピノノワール、ゲヴェルツトラミネール等の冷涼系品種が栽培されていることが多いです。品種の選択肢が広がることは良いことだと思います。

また、標高が低いところでは、ワインブドウに大切な酸が早々に落ちてしまう傾向があるようです。品種やクローンにもよりますが、収穫前の分析値を見ても、標高が低い畑は酸落ちが早く、pHも高い傾向があります。酸が低かったり、pHが高いと醸造において亜硫酸の効きが悪くなり、微生物汚染や酸化のリスクが高くなるため気を遣います。標高を高くすることで、これらのことを防ぐことができそうです。将来、温暖化が進んでも酸を保持した良いブドウがつくれるかもしれません。

標高が高いことのデメリット

標高が高いといいことばかりではありません。標高が低い畑と比べると、以下のデメリットがあります。

  • 糖度不足になり、酸が残りすぎてしまう
  • 収量が低くなりやすい
  • 病気になりやすい

聞くところでは、現時点においても標高が高い畑ではブドウが熟さないということがあるようです。特に冷涼な年や、標高が高い畑で温暖な気候を好む品種(メルローなど)を栽培している場合はその傾向が強くなります。

また、標高が高いと収量が低くなるリスクがあります。気温が低い分、霜害が発生しやすかったり、花芽の形成が悪く翌年の収量が減るなどします。収量が減れば、品質は良くなるんでは?という考えもあります。しかし、論文を読む限り収量が減れば品質が良くなるとは言えないようですし、今働いているワイナリーでも収量低下と品質向上の因果関係は認められていません。

さらには、標高が高い畑では病気が発生しやすくなります。ブドウに適温帯があるように、菌たちにも適温帯があります。ベト病や灰色カビ病は低温を好みますので、標高が高い畑はこれらの病気にかかる可能性が高くなります。また、根頭がんしゅ病(こんとうがんしゅ)という病気も発生しやすく、樹が次々に枯死していくことにもなりかねません。

個人的な考え…

私も最初は標高が高い畑が良いと思っていましたが、今は考えを改めました。

なぜならば、健全で十分な収量を恵んでくれるブドウの樹齢はせいぜい30~50年。一方、今後100年で見込まれる上昇温度は1~4℃(環境省・気象庁)、単純計算で50年後に見込まれる温度上昇は0.5~2℃。よって、50年後に現在と同じ温度帯を確保できる畑は、標高にして100~300m分高い場所になります。標高1,000mもの高さが必要でしょうか。

50~100年後を見据えて標高が高い畑を選び、熟度が足りない、病気がでる、収量が上がらない…と悩むより、現在とせいぜい10~20年先の気候を見据えて畑と品種を選定し、50年後に温暖化が進めば品種を改植すればいいと考えています。
私の場合、標高950mに5%ほどの畑がありますが、残りの95%は標高600mの場所を選びました。

次回の記事では、新梢誘引などの畑作業について書きたいと思います。
引き続き、よろしくお願いいたします。

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